ゴエクロ世界はループしている

世界はループしている?

この世界がループしているのは、序盤で示唆されていました。
初出は1章6部4節です。

「終わった世界を、また始めるために」主人公の決意の後に場面転換し、髪が黒いエル(以降、黒エル)が語り始めます。

エル?「……」
エル?「……やはり、こうなってしまうのか。神に抗う者よ」
エル?「私は……知っている。滅びの輪廻を知っている」
エル?「この先は、あなたが選択した並行世界」
エル?「あなたは4度枝<<ルート>>を繰り返した。そして――私はその結果を知っている」
エル?「でも、私に語る資格はない。私はあなたを止めることができなかったのだから……」
エル?「だから言わない。あなたは自分で思い出さなければならない」
エル?「あなた自身で見極めなくてはならない。4つの枝から伸びる先端が未来につながっているのかいないのかを……」
(1章6部4節)

「……やはり、こうなってしまうのか」本部が壊滅し、女神が連れ去られるのを彼女が見るのはこれが初めてではないことがわかります。
彼女の言葉通り、物語はこの後サタナエル・ベルゼブブ・サマエル・アザゼルの4ルートに分岐します。黒エルは全てのルートを観測してきた存在ということです。
黒エルの他にも、枝について触れられているシーンがあります。

クロウ「我々には空間の歪みが見えません。グレモリ様にはどのように見えているのですか」
グレモリ「うーん、そうねー。難しい質問だけど、あえて例えるなら木の枝かしら」
クロウ「枝……ですか?」
グレモリ「ええ。今私は、ベルちゃんと話した空間の狭間まで伸びている枝を辿っているの」
リガル「なんだよ、その言い方だと枝っていうのは何本もあるみたいじゃねーか」
グレモリ「その通りよ。空間から空間に繋ぐ木の枝は複雑に重なりながら伸びているの。今私たちのいる世界が木の幹だとすれば、ベルちゃんがいる場所はその幹から伸びた枝のひとつでしかない。木はたくさん枝を伸ばすでしょう? だからここから沢山の枝が伸びている」
グレモリ「この世界が辿る可能性のある未来。この世界が辿るかもしれなかった過去。もしかするとこの世界とは限らないわね。でもね、その辿った先の世界もそこから枝が伸びている場合もあるの。だからさっきこの世界が木の幹と例えたけれど、もしかするとどこかの木の幹の枝の一部なのかもしれない」
(2部ベルゼブブ編6章5節)

世界を木に例えたグレモリの説明は、ベルゼブブルートが始まりではなく枝分かれした後の世界であることを仄めかしています。
沢山の枝が伸びているとも言っていることから、主人公が繰り返した4ルート以外にも無数の可能性が存在しているのが伺えますね。

序盤の黒エルの台詞、グレモリの例えで、ループしている世界の内の一つであると推測できます。
しかし黒エルは「並行世界」とも言っており、4ルートが同時進行だったのかどこかのルートの全滅後に他ルートが始まっていたのかまではこの時点では明らかになっていません。
何をトリガーにして繰り返しているのかも不明です。
判明したのは5部サタナエル4章5節です。

アドニアは、数々の歴史書や古文書、遺跡等を独自に研究し、人類の勝利への道筋を命懸けで探ってきた。そして、一つの結論を導き出した。それは、神に抗うための鍵とされてきた女神さえ信じることができないというものであり、この時アドニアは真の絶望を味わった。
(女神は、力だけであれば神にも届きうる。しかし、どれほどの力があろうと我々が勝利することはない。なぜなら……)
アドニアは確信していた。この世界は、何度も同じ「時」を繰り返している。恐らくは500年前の神への反乱から。(中略)

時が何度繰り返しても女神は反乱し、人類は滅ぼされる。幾度も人間たちに絶望を与えるのは創世神だけではなく人間を争いに巻き込む女神もなのだ。
(5部サタナエル4章5節)

死に際のアドニアの回想でこの世界が500年前から繰り返していることが確定しました。
何度繰り返しても人類は滅ぼされると言っていることから、トリガーは「この世界の滅亡」であると思われます。

もうひとつ、立てた仮説がある。肉体が滅んでも魂に記憶が刻まれている、あるいは刻まれている人間がいるというものだ。それは、時の繰り返しを知っているということであり、「時」が戻る度に戦いと絶望を味わい、魂は傷つけられていることになる。
アドニア(今生の命が尽きても、記憶を保ったまま初めから繰り返す……これほどの絶望が、あろうものか……)
これまで自分が歩んできた血塗られた道が正しいなどと、胸を張って主張することは到底できない。だが、アドニアは地上の希望であるソロモンの末裔、主人公を見出した。主人公の素振りを見るに、時の繰り返しを認知しているとは考えにくい。しかし、大魔導師の末裔ならば魂の謎を解き明かせるだろう。
そして、きっと「次」こそ、天と地が平定された、平和で光に満ちた世界が訪れるかもしれない。
(5部サタナエル4章5節)

世界はループしている

・この世界は500年前の神への反乱から繰り返している。
・サタナエルルート以前から何度も繰り返しており、サタナエルルートで人類が滅ぼされると500年前まで時が戻り次の世界が始まる。
・時の繰り返しが魂に刻まれ、知っている人間がいる。(アドニアは知らない)

これらの重要な情報が明かされました。
では、4ルートはどんな順番で繰り返しているのか? 時の繰り返しを知っている人間はいるのか? を考えていきたいと思います。

4ルートはどんな順番で繰り返しているのか

まずはメインストーリーの遷移画面を見てみましょう。

上から順番にサタナエル、ベルゼブブ、サマエル、アザゼルルートで並んでいます。これらはメインストーリーの更新順でもあり、サタナエル編が最初に更新されるようになっています。
最初に「この世界がループしている」と明かされるのもサタナエル編で、この枝が終われば次が始まると示されていることから、他3ルートはサタナエルルートの後だと推測できます。
裏付けるシーンがベルゼブブルートにあります。

あなたは夢を見ている。自分でもそれに気づいているが、現実と遜色のない鮮やかな光景だ。
今まで訪れた事のない城のような場所にあなたはいる。
そして、隣にいるのはベルゼブブとサマエルではなく、これから救いに行くはずのサタナエルの姿だった。

サタナエル「皆の者! しっかりしろ!」

サタナエルが凛と響く声で叱咤する。

サタナエル「我ら女神が必ずお前たちを古城の外へ導こう。辛いだろうが今は私たちを信じて耐えてくれ」

戦いに消耗した魔導師たちの顔つきが変わるのを、あなたは感じ取った。
そうだ、女神たちの言葉には力がある。人間の心を動かす力だ。それが女神が女神たる所以なのかもしれない。
この光景は経験したことのない出来事のはずだが、あなたはなぜだか初めて見た光景には思えなかった。

まるで、一度この光景を体験したかのように……
(4部ベルゼブブ編2章6節)

主人公が「まるで、一度この光景を体験したかのように……」と夢に見たのは、4部サタナエル1章5節での出来事です。
主人公はサタナエルルートの後にベルゼブブルートに入ったのがわかります。つまりサタナエルルートはバッドエンドです。
ベルゼブブルートで思い出すのがサタナエルルートのみであったということは、順番はサタナエル→ベルゼブブだと考えてよさそうです。
これはメインストーリーの並び/更新順も一致しますので、サタナエル→ベルゼブブ→サマエル→アザゼルの順で主人公は繰り返していったのではないでしょうか。
ただし外伝、忘却の奇譚ではサタナエル→アザゼル→サマエル→ベルゼブブでしたので、違っているかもしれません。

時の繰り返しを知っている人間はいるのか

サタナエル5部前編まで更新された現在、時の繰り返しを知っている人間はアドニア以外に出てきていません。
そのアドニアも魂に刻まれているのではなく、自力で答えに辿り着いています。

しかし、ベルゼブブルートにて「時の繰り返しを認知しているとは考えにくい」と言われていた主人公が以前のルートを夢に見ました。
他の人間も、夢で見るくらいはあるかもしれません。
可能性が見えるのが、グレモリに枝の説明をされた後のクロウの反応です。

クロウ「辿るかもしれなかった未来……過去……」
リガル「辿る「かも」しれなかった未来とか過去とかそんなのどうだっていいだろ。俺がいる場所が今なんだから」
グレモリ「ふふふ……! その通りよ! 今言ったこと決して忘れないで。それを忘れなければ私たちはこれからも戦っていけるわ」
リガル「あ? ああ」
クロウ「…………」
(2部ベルゼブブ編6章5節)

グレモリが何を言っているのかわかっていないリガルに対し、クロウは考え込んでいます。
サタナエルルートでは対価が原因で寿命が短くなり、このまま死亡すると思われるクロウは、何かを覚えているのかもしれません。
記憶があったとしても、黙っている人間もいるでしょう。個人的には女神の前に姿を見せようとしない第一支部長チックがそうではないか、と思っています。

本編のみではなく、イベントでも気になる発言があります。
1周年記念イベント、追想なる試練の中でのエルです。

エル「本当はあの時、あなたの前に我慢できず現れたのは私の方なんです」

あの時というのは、あなたがエルと初めて出会った時のことだろう。しかし、我慢できずに現れた、というのは一体……?

エル「主人公様とクロウが魔導書の実体化を目指すと知った時に、以前より抱えていた想いが溢れ、自分を抑えられなくなっていたのです。……私は契約したあの日から、ずっと主人公様にお会いしたかった」
エル「本当は、あの時に課した試練も実体化の理由をつけるために行ったこと。本当なら、私たちが出会うのは――むぐっ!?」

エルがそこまで言いかけた所であなたは彼女の頬を軽くつねる。どんな事情があったかはわからないが――彼女に出会えたことで自分は強くなれたということと、そして、これからもずっと一緒にいて欲しいということを伝え、手を離した。
(一周年記念イベント 追想なる試練の中で)

エルが何を言おうとしたかは、主人公に遮られわかりません。文脈的に「本当なら、私たちが出会うのはもっと先になるはずだった」「別の場所だった」といったところではないでしょうか。
このエルは以前にも主人公に出会った記憶があるのです。
それを考えると、本編のエル≠追想なる試練の中にのエルだと思います。

誰が何のために繰り返しているのか? はまた後日考えたいと思っています。