第一印象は「気難しそうなやつだな」だった。
表情がほとんど変わらなかったせいかもしれないし、口数が少なかったせいかもしれない。後になって実は初めての契約で緊張していただけ、と知るのだが。
その時のオレはリゲルと大差ない新人だったから、気持ちばかりが先走って空回る事もあった。でもあいつは、オレがどんなに頼りなくても、攻撃を外しても、一度たりとも責めはしなかった。守護者がいるから浄化に専念できる、俺達は浄化しか能がない。とぶっきらぼうな口調で、感謝を伝えてくれたのだ。
何度もホシビトとの戦闘を繰り返し、同じ釜の飯を食っていれば、絆だって芽生える。妹がいる、と聞いたとき、こいつが自分の話をしてくれたのが嬉しくて、オレは「いつか会ってみてえな」と口にしていた。こんな兄貴がいたら、妹はさぞ自慢に違いない。リゲルは一瞬の間をおいて、「浄化者を目指しているからそのうち会える日もくるだろう」と答えた。
――――だからオレは、楽しみにしていたのだ。オレが知らない「兄」としてのリゲルの一面が見られる日を、気を張り詰めているこいつのひとときの安らぎになればいいと願って。
こんな、こんな想いをするために契約したわけじゃなかった。会いたかったメイサとの会話はもっと、明るいものになるはずだった。曇った顔なんて、きっと彼女には似合わない。本来ならば溌剌とした少女だ。メイサの背中をさすり続けるアルゴルはオレよりずっと大人で、オレも取り乱してはいられない。なあ、でも。ミッドガルドに戻ったら花を供えるくらいは、許してくれるよな。
リゲル、最期に呼んだ名は、お前には届かなかった。