「近頃、ぼうっとしていることが多いですね。何かあったのですか?」

 ポラリス隊の隊長であり幼馴染でもあるクロウに心配そうに尋ねられる。あなたはすぐに彼が何を指しているのか理解した。大戦前、まだ彼女たちが魔神ではなく天使であった頃の記憶を覗いている時間のことを言いたいのだ、と。

 フルフル、デカラビア、アンドラス……最近では、アスタロト。過去の彼女たちと出会い、会話した時間は、あなたにとっても幻のようなものだった。上手く説明できる自信もなく、大丈夫だと返し続けていたのが流石に気になったようだ。

「どんな内容でもいいですよ。話してください」

 前置きしたあなたに、クロウは柔らかく微笑む。昔からよく知る笑顔にほっとし、順序を追って話すことにした。

「500年前に飛んでる……!?」

 青い瞳をこれ以上ないほど見開き、驚くクロウ。それから、きらりと輝かせた。

「天使様たちはどんな感じでした!? 女神様とも話したんですか!?」

 ああ、彼はぶれない。
 信じてもらえないかもしれない、という不安があったわけではないが、一貫したクロウの態度を見て肩の力が抜ける。どうやら、自分でも気づかないうちに緊張していたらしい。あなたが首肯すると、彼はさらに興奮した様子で色々な質問を投げかけてきた。その一つ一つに、答えていく。一つ話す度幻に色がつき、形になっていくような、そんな気持ちが芽生えていた。彼のおかげだと礼を言ったあなたに、クロウはまた笑う。

「どういたしまして」

サファイアの信頼