「最果てまで行きたい」
夢を見たのだと、言った。ここではない別の世界で魔導師として生きる自分たちの夢を。
高校生の身分では行ける範囲は限られているので、有り金をはたいて切符を買い、いくつか電車を乗り換える。その間、二人の間に会話はない。幼馴染は頬杖をついてぼんやりと窓の外を眺め、クロウはそんな幼馴染の横顔を見つめていた。
古びた無人駅はこんなことでもなければきっと縁がなかっただろう。カウンターに乗った赤く色づいた紅葉が、やけに印象的だった。
相変わらず一言も喋らないまま、海への道を歩く。寒くはないか尋ねようかと思ったけれど、見慣れない背中にそっと投げかけるだけにした。
違う。
夕暮れに染まる海を見て、幼馴染がぽつりと呟く。神に見放されたあの世界の空は常に薄暗く、水も濁っていた。重なる箇所は一つもない。唯一の共通点を上げるならば、世界に取り残されたかのように静かな地で二人きりだという事か。
「あのさ」幼馴染が語り出す。世界を守るために戦い続ける魔導師は死と隣り合わせで、師匠も、仲間も、部下も、数え切れないほどの人を失ってしまった。息遣いもページをめくる手も頭から浴びた血も現実としか思えないリアルさがあり、起きた時どちらが夢なのかわからなかったらしい。だからどうしても確かめたかったのだと。どこかで彼らに会いたかったのだと。最期に見たのがクロウの顔だったから巻き込んだごめん、と謝って。
なんで付き合ってくれたのかと聞かれた。返答に迷い、あなたがあまりにも真剣だったので、と返す。嘘ではなかった。真実でもなかった。だが幼馴染は納得してくれたようだ。
寒いね。
ようやく戻ってきた今の幼馴染に、海に来るには遅すぎたとクロウもいつもの調子で笑う。幼馴染が求めたものは別の何かだったことも知っていたが、告げる気はしない。今日のことを忘れないように、と右手を差し出してきた幼馴染に倣って、自身も右手を出す。あなたはまっさらなままいてくれればいい、何度も繰り返して来たなんて知ることなく。
「指切りしよう」
「最果てまで行きたい」で始まり、「指切りしよう」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば6ツイート(840字程度)でお願いします。