ゴエティアクロス
魔導師たちの攻撃を受けて、ワールドの巨大な身体が崩壊していく。
ワールド『エラー発生。エラー発生。……損傷率、95%。修復機能、大破しています』
ワールド『再度の広範囲時間停止は発動できません。事象改変による全体機構の再生はできなくなっております』
ワールド『……皆様を幸福にする、業務の遂行は困難です。機能停止以外の選択肢は棄却されました』
ワールド『……私は何を、間違えたのでしょう』
ワールド『元の世界でも、ここでも……命害たちも同様……彼らは幸福を望んでいない……』
ワールド『検索結果、0件。予測演算結果、エラー。何故……なのでしょうか……』
ワールドの巨大なパーツが本体から剥がれ落ち、地上に落ちる前に燃え尽きて消えていく。
その下で、壊れていくワールドを見上げ、ラジエルは嗤っていた。
ラジエル「安心しろよ。お前のデータは、私が有効に役立ててやるからよ」
ラジエルは降り注ぐ機械の欠片を掴み取ると、それを小さな羽に変えた。
???「――何もない」
???「レメゲトンは、私は縁を手操れない」
???「ゲーティアは、ただの防衛装置となり果てた」
???「テウルギアもまた、新たな世界に糸を伸ばすことはない」
???「ここまでなのか、私の復讐は。もはや熱量は枯れ果てていく。……動くことができない」
ここではないどこか。
漆黒に包まれた世界に、男の声が響いていた。
そんな何もない世界の中に、一枚の羽が舞い降りる。――鉄が軋む音が継続的に鳴った。
???「これは、なんだ……? ゲーティアの防衛を潜り抜け、塔界から何かが来たとでも……?」
???「これは……設計図? ワールド……異界を観測し、侵略し、時間を支配し、熱量を抽出する機構だと……?」
???「……そうか。これを使えと言うのだな」
???「いいだろう。愚かな天使よ。そこまでして享楽を求めるというのならば――」
???「塔を建てよう。その熱量をもって……貴様に、貴様らに我が矢を届けてくれる……!」
――命害大戦 ワールド――
――閉幕――
ゴエティア-千の魔神と無限の塔-
ワールド戦を閉めたログインストーリーに、謎の人物が登場しています。
結論から言うと、前作ゴエティア-千の魔神と無限の塔-においてラスボスであったソロモンです。
天界大戦に敗北したソロモンは、神を倒す力を得るため地獄に堕ちました。
その地獄で足掻いていた頃、時系列的にはゴエティア-千の魔神と無限の塔-本編開始前になるはずです。
第十塔界 膨張し乱れる意思Ⅰ
テウルギア「ここからは、私が観測した結果から「推測」されるもの。おそらく、ソロモンの計算はこの時点で少し狂っていた。レメゲトンが、己の力だけでは塔界との縁を辿れないこと。他の世界から熱量を奪い取るという芸当は、ソロモンという「支配者」がいたからこそ成せたものであった。ゲーティアが、基底世界の防衛装置と成り果てたこと。稀に縁の糸を辿ってこの基底世界に侵入するモノを、消し去るだけの装置となっていた。そして、私が――テウルギアが、新たな塔界との縁を作り出さないこと。今まで奪い取った熱量は、全て私が作った「糸」を使っていた。ささやかなる、反抗。だがきっと、ソロモンは気付いていないだろう。私が、自らの意思で、「動くのをやめた」ということに」
テウルギア「すべてを諦め、自棄に陥る。私が観測してきた世界の中にも、そういう生き物がいた。見すぎてしまったせいで、毒されている。だけど、見てみたかった。全てを知っている私が、動きを止めればどうなるのか。私は己の意思で思考を止めた。ただ、時間の経過と共に枯れ果てていく基底世界と、熱量を奪われなくなったことで少しずつ蘇っていく世界を観測する」
第十塔界 膨張し乱れる意思Ⅱ
テウルギア「私が黙してから、永い時が流れた。ソロモンは、レメゲトンになった。レメゲトンは、ソロモンとなった。ゲーティアに、動く気配はない。元よりあれに意思などなかったので、世界の根幹に座しているのだろう。今この状況に「何か」を感じているのは、私と、ソロモン」
テウルギア「どれくらいの時間が流れたのかは分からない。基底世界が完全に力を失い、再び「無の暗闇」に戻ろうとしていたとき――ソロモンは、ついに動いた。いいや、それがソロモンであったのか、消滅を危惧したレメゲトンであったのかは分からない。その二つは、永い時の中で一つとなっていた。故に、二つに境目などない。ソロモンは、レメゲトンとなったのだから。だからこそ、なのだろう。基底世界が無の暗闇に戻れば、世界と融合したソロモンの魂も消えてしまう」
テウルギア「そして確かに、変化が起きた。この世界に、12の塔が出現したのだ」
テウルギア「私が観測してきた世界に在った生命。その中でも、特に強い力を持ち、強い執念を持ち、選ばれた魂を持つ――「支配者」の素質を有した者たちを基底世界に引き込み、レメゲトンは再び塔界への侵攻を果たす」
テウルギア「基底世界は、息を吹き返した。動き出した世界を、観測しなければらならない。あの男が、自らの目的のために、どれだけ愚かなことをしようとしているのか。私は、観測しなければならない。誰の手も届かない、この俯瞰の高みから」
???「塔を建てよう。その熱量をもって……貴様に、貴様らに我が矢を届けてくれる……!」
テウルギア「そして確かに、変化が起きた。この世界に、12の塔が出現したのだ」
熱量が不足して滅びかけていた基底世界にもたらされたのが、ラジエルが届けたワールドの設計図ということですね。