「大掃除をしようよ!」

 最初に言い出したのは、綺麗好きな魔神オセだった。

「ほら、今年の汚れは今年のうちにって言うでしょう? ぴっかぴかの塔で新年を迎えるの! いいよね?」

 彼女の言うことにも一理ある。汚い部屋で迎える新年と綺麗な部屋で迎える新年とでは気分も違うだろう。あなたが拒否する理由はない、しかし――

「いい考えですね。塔の汚れは風紀の乱れに繋がります。私も協力しましょう!」
「清潔にしてた方が距離感も保てるかな、保てるよね? うん私も手伝うよ」
「セーレもがんばるっすよー! みんなでやれば早く終わるっす!」
「わたしが女王として導いてあげるのだわっ! 感謝しなちゃ、しなさい!」
「気持ちよく眠れる塔になりそう……がんばってークカー」
「あらあら、みんな張り切っているのね。グレお姉さんが見守ってあげなくちゃ」

 プルソン、シトリ、セーレ、ボティス、バラム、グレモリ……次々に増えていく魔神たちはオセに渡された箒や塵取りを手にし、セーレに至っては自身の精霊に可愛らしい柄の三角巾を被せている。あなたが戸惑っていたら、いい香りを漂わせている皿を持ったマルデロが姿を現した。

「何の騒ぎなの?」
「みんなで大掃除をするっすよー! 精霊くんもやる気満々っす!」
「へえ、変わったことをするのね。でもそうね、わたしもキッチンを片付けようかしら。調味料が増えてごちゃごちゃしていたし」

 うんうん! と盛り上がる魔神たちに、あなたは本音を伝えるか迷った。殺風景とすら言えるこの塔に改めて掃除する箇所があっただろうか、と。

「楽しそうな若者たちに水を差すのは野暮というものじゃ。この程度許せぬ尻の穴の小さい王でもなかろう?」

 いつの間に背後にいたのか、アモンに諭されたあなたは彼女の言う通りだと了承することにする。しかしその言い方は少々いかがなものか。あなたが微妙な顔をしたことに気付いたようで、「はて、 儂が何か言ったかのう」と首を傾げられてしまった。彼女は今日もいつも通りだ。

「貴女たちは私のいないところで何を話し合っているんです! 私も王のために参加するに決まっているでしょう!!」
「ええー……レンがいても役に立たないっす……」
「なっ」
「うーん……頭の上に雑巾でも乗せて高いところ掃除してもらうとか? 猫の手も借りたいって言うしね」
「な、な、なっ!? オセ貴女、魔導書をなんだと思って……っ!」
「魔導書は魔導書だよね、だよ。今回は私たちに任せて」
「王の相手をしてあげるといいわ! さ、寂しそうにしてるし……」
「わたしちょっと混ざる場所間違えたかしら。けど悪くはないわね」
「さあ、調教の……いえ、掃除の時間です始めましょう!」

今年の汚れは今年のうちに